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5章:樹里
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居間に通された僕は樹里の位牌が祀られている仏壇に線香をあげ、手を合わせた。
飾られている遺影を見て、改めて樹里の死を実感した。
ふと、仏壇を見上げると樹里の遺影の横の女性の遺影に目がいった。
年の頃は高校生くらいだろうか。
二重瞼の大きな瞳、通った鼻筋に大きめな口唇。そして薄茶色のストレートの髪。
雰囲気がどことなく母に似ていた。
この人は樹里の…
「…姉の由莉香だ」
タイミングよく龍哉さんがお茶を持ってきた。
「樹里にお姉さんが居たんですね」
「…そんな事も知らんかったとか」
龍哉さんは冷たく言い放つとお茶をテーブルに置いた。
「…話とは何ね?」
龍哉さんの方向に向き直るとその場で土下座をした。
「本当にごめんなさい。樹里さんの事…謝っても謝りきれません…ごめんなさい、ごめんなさい!」
震える声で精一杯告げた。
龍哉さんは何も言わない。
沈黙が居間を支配した。
顔を上げる事なく土下座を続け、ひたすら謝罪した。
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