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5章:樹里 (7/8)

東京に着く頃には既に日が変わろうとしていた。


朦朧としながらも家に辿り着くと部屋の電気を点けた。


鞄を置き、ベッドに腰を掛ける。


『なして樹里を殺さんとならんかったとや』


どうして樹里を殺したか。


…樹里はいつまでも傍に居てくれると思っていた。


父親にバレて会えなくなってしまってもずっと僕を想い続けて待っていてくれると信じていたんだ。


だからfeelで店長から樹里が佐賀に帰ると聞いて居ても立ってもいられなかった。


そして樹里の異動先の店舗に行った。


でも…
そこで待っていたのは冷たい目つきで、無感情な声で辛辣な言葉ばかりを言う樹里だった。


『幸一郎君さ、もしかして私が君を好きだとでも言いたいの?』


樹里は僕を愛してなかったのだと言い、最終的には僕との時間を“恋愛もどき”呼ばわりしたんだ。


どんなに問い質しても樹里の考えが変わる事はなく、僕は樹里が佐賀に帰るのを止める事は出来ないと思った。


樹里は佐賀に帰ったら他に好きな人が出来てしまうかもしれない。


そうしたら僕の事なんか直ぐ様忘れてしまうだろう。


他の男が樹里に触れる。
そのサラサラな髪を撫で、小さめな形のよい口唇を奪い、しなやかな身体を抱き寄せるのかと思ったら気が気ではなかった。


心がどす黒い感情に支配されていった。


樹里が佐賀に帰るのを止められないなら…他の人に取られてしまうくらいなら…


そうして僕は大きな過ちをおかしたのだ。

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愛証 ©著者:ゆえ

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