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71章:空を歩く男
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71章:空を歩く男
師匠から聞いた話だ。
大学一回生の春だった。
そのころ僕は、同じ大学の先輩だったある女性につきまとっていた。
もちろんストーカーとしてではない。
初めて街なかで見かけたとき、彼女は無数の霊を連れて歩いていた。
子どもの頃から霊感が強く、様々な恐ろしい体験をしてきた僕でも、その超然とした姿には真似の出来ない底知れないものを感じた。
そしてほどなくして大学のキャンパスで彼女と再会したときに、僕の大学生活が、いや、人生が決まったと言っても過言ではなかった。
しかし言葉を交わしたはずの僕のことは、全く覚えてはいなかったのだが。
『どこかで見たような幽霊だな』
顔を見ながら、そんなことを言われたものだった。
そして、綿が水を吸うように、気がつくと僕は彼女の撒き散らす独特の、そして強烈な個性に、思想に、思考に、そして無軌道な行動に心酔していた。
いや、心酔というと少し違うかも知れない。
ある意味で、僕の、すべてだった。
師匠と呼んでつきまとっていたその彼女に、ある日こんなことを言われた。
「空を歩く男を見てこい」
そらをあるくおとこ?
一瞬きょとんとした。
そんな映画をやっていただろうか。
いや、師匠の言うことだ。なにか怪談じみた話に違いない。
その空を歩く男とやらを見つければいいのか。
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