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62章:列
師匠から聞いた話だ。
大学に入ったばかりの頃、学科のコースの先輩たち主催による新人歓迎会があった。
駅の近くの繁華街で、一次会はしゃぶしゃぶ食べ放題の店。二次会はコースのOBがやっているドイツパブで、僕は黒ビールをしたたかに飲まされた。三次会はどこに行ったか覚えていない。
ふらふらになり、まだ次に行こうと盛り上がっている仲間たちからなんとか逃げおおせた頃には夜の十二時近くになっていただろうか。
同じようにふらふらと歩いているスーツ姿の男性とそれにしなだれかかるような女性、路上で肩を組んで歌っている大学生と思しき一団、電信柱の根元にしゃがみ込む若者と背中をさする数人の仲間……
そんなごくありふれた繁華街の光景を横目に僕は駅の方角に向って、液体のように形状の定まらない足を叱咤しながら歩いていた。
前掛け姿の店員が看板を片付けている中華料理屋の前にさしかかった時だった。
自分が進んでいる道と垂直に交差する道が視界の前方にあり、その十字路の上を奇妙なものが歩いているのが見えた。
それは街路灯に照らされているわけでもないのに、ほんのりと光を纏っている。人間のようにも見えるが、妙にのっぺりしていて顔があるあたりは眼鼻の区別が定かではない。そういうものが何体も前方の道を右から左へ通り抜けて行く。
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