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59章:なぞなぞ
大学四回生の冬だった。俺は仲間三人と少し気の早い卒業旅行をした。
交代しながら車を運転し、北陸まわりで関東へと入った。宿の手配もない行き当たりばったりの旅で、ビジネスホテルに泊まれれば良い方。どこも満室で、しかたなく車の中で寒さに震えながら朝焼けを見たこともあった。
目的はない。ただ学生時代特有の怠惰で無為な時間の中に、もう少し全身を沈めていたかった。みんな多かれ少なかれそんな感傷に浸っていたのだと思う。
ある街に着いた時、俺はふと思いついた。知り合いがこのあたりに住んでいたはずだ。
携帯電話で連絡をしてみると、懐かしがってくれた。一時間くらいあとで落ち合うことにする。
並木道がきれいに伸びている新興住宅地の中を通り、路肩に下ろしてもらい「終わったら連絡くれ」と言って去っていく仲間の車を見送る。
都心から離れるとあの、人であふれた息の詰まるような町並みよりも、空間的にずいぶん余裕がでてくるようだった。
カラフルな煉瓦で舗装された道を自然と浮き足立つステップで進み、大きなマンションが群れるように立ち並ぶ方へ目をやる。
マンションというより、団地か。そこへ向かう道は軽く傾斜し、丘になっている。
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