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54章:指さし
小学校のころ、海沿いの青少年の家でクラス合宿があった。
近くの神社までの道を往復するという肝試しをしたあと、あとは寝るだけという時間帯がやってきた。
怖い思いをした直後の妙なテンションのせいか、僕らは男女合わせて八人のグループで建物の一階の奥にある談話室に集まった。
消灯はついさっきのことだったので、まだ先生が見回りにくる可能性があったが、見つかったらそのときだ、と開き直っていた。
なぜならその中に一人、怪談話の得意なやつがいたのだ。
普段は目立たないのに意外な才能というのか、とにかく彼の話す怖い話は訥々とした語り口と相まって異様な雰囲気を作り出していた。
僕らは夢中になって彼の言葉に耳を傾けた。いや、その場から離れられなかったというべきか。
畳敷きの談話室は背の低い本棚が壁際にならんでいるだけで、その本棚に車座になった僕らの影がゆらゆらと揺れていた。円陣の真ん中に、彼がろうそくを立てているのだ。
いつもは体育の授業も休みがちで、青白い顔をして教室の隅でじっとしているイメージの彼が、そのときは僕らを支配していた。誰ももう寝ようなんて言い出さなかった。
一人で部屋まで戻れと言われるのが怖かったのだ。
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