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52章:古い家
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52章:古い家
「面白い話を仕入れたよ」
師匠は声を顰めて【ひそめて】そう言った。
僕のオカルト道の師匠だ。面白い話、などというものは額面どおり受け取ってはならない。
「県境の町に、古い商家の跡があってね。廃墟同然だけど、まだ建物は残ってるんだ。
誰が所有してるのかわからないけど、取り壊しもせずに放置されてる。
誰も住んでいないはずのその家から夜中、この世のものとは思えない呻き声が聞こえるっていう噂が立ってね。
怖がって地元の人は誰も近寄らない。どう、興味ある?」
大学2回生の夏だった。
興味があるのないのというハナシではない。ただその時の僕は、(ああ、今回は遠出か)と思っただけだ。
その夏は、1年前の夏と同様にいやそれ以上に、怖いもの、恐ろしいものにむやみやたらと近づく毎日だった。
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