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46章:雨音
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46章:雨音
大学2回生の秋の終わりだった。
その日は朝から雨が降り続いていて、濡れたアスファルトの表面はもやのように煙
っている。
こんな日には憂鬱になる。気分が沈滞し、思考は深く沈んでいる。
右手には川があり、白いガードレールの向こうもかすかに煙って見える。
カッチカッチと、車のハザードランプの音だけがやけに大きく響く。それだけが世
界のリズムになる。すべてがそのリズムで成り立っている。
俺はもう一度川を見た。
あのガードレールのこちら側に雨は降り、あちら側にも同じ雨が降りそそいでい
る。道に落ちる水と、川面に落ちる水。見上げれば暗く低い空から、それでも数百
メートルの高さをゆっくりと落ち、地表においてわずか数センチの違いで運命が分
かれている。
このイメージが妙に可笑しくて、運転席でハンドルに頬杖をついている人に伝えた。
すると彼はめんどくさそうに口を開く。
「此岸と彼岸の象徴か。確かにこの世とあの世なんてたったそれだけの違いだよ。
けど、地中に染み込んでも川を流れても、いずれは海にたどり着く」
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