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38章:家鳴り
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38章:家鳴り
大学2回生の夏のこと。
俺は心霊写真のようなものを友人にもらったので、それを専門家に見てもら
おうと思った。
専門家と言っても俺のサークルの先輩であり、オカルトの道では師匠にあた
る変人である。
彼のアパートにお邪魔するとさっそく写真を取り出したのであるが、それを
手に取るやいなや鼻で笑って、
「2重露光」
との一言でつき返してきた。
友人のおじいちゃんが愛犬と写っているその後ろに、ぼやっと人影らしきも
のが浮かび上がっているのであるが、師匠はそれをあっさりと撮影ミスであ
ると言い切ったのだ。
俺は納得いかない思いで、「それならいつか見せてもらった写真にだって似
たようなのあったでしょう」と言った。
その筋の業者から買ったという心霊写真を山ほど師匠は持っているのだ。
ところが首を振って「今ここにはない」と言う。
俺は狭いアパートの部屋を見回した。
そのとき、ふとこれまでに見せてもらった薄気味の悪いオカルトアイテムが
どこにもないことに気がついたのだ。いくつかは押入れに入っているのかも
しれない。しかし、一度見たものが、また部屋に転がっているということが
なかったのを思い出す。
「どこに隠してるんです」
師匠は気味悪く笑って、「知りたい?」と首をかしげた。
素直に「はい」と言うと、「じゃあ夜になるまで待とうな」と言って師匠は
いきなり布団を敷いて寝始めた。俺はあっけにとられて、一度家に帰ろうと
したがなんだかめんどくさくなり、そのまま床に転がってやがて眠りについた。
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