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11章:頭のない人形
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11章:頭のない人形
先日、ケイさんが病院の事情により二、三日ほど名古屋に滞在することになった。動物嫌いのケイさんは猫がいる俺の部屋ではなく同期の松田の部屋に泊まることになった。
もちろん俺も遊びに行き、三人で酒を飲んで騒いでいた。そんなとき、何かの拍子にジジコンな松田の今は亡きお祖父ちゃんの話になった。お祖父ちゃんは松田に甘かったらしく、誕生日にロゴのセット(当時は割りと高級品)を買ってくれたそうだ。
「でもさあ、全部弟に壊されちゃって残ったのはこの人形だけなんだよね」
と、松田は工場の人のような人形を見せて来た。その人形を片手にお祖父ちゃんの思い出を語る松田を見て、俺はよからぬイタズラを考えてしまった。今思えばほんとに最低だったと思うが、普段から奴にからかわれているので仕返しがしたかったのだと思う。
しばらくしてケイさんがトイレに立ち、酔いつぶれて松田が寝てしまったのを見計らって俺は人形をコッソリ懐に入れた。そして帰ってきたケイさんに松田を押しつけて部屋を出ると、松田の部屋のドアの前に人形を置いておいた。
俺と松田の部屋は寮の最上階だから誰かが通りかかって拾う心配もなかったし、単純な松田は「お祖父ちゃんの霊があいにきた」と思うだろうと思って。
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