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9章:社員旅行(二日目)
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それが、人間の腕だと気がついたのは次の瞬間だった。
「うわ、あぁあっ!!!!!」
慌てて飛び退いた。だが、それと同時に、俺は「何か」に突き飛ばされた。
背中を押される感覚は、残念ながら学生時代に親無しだといじめられた経験からよく知ってる。
あの悪意に満ちた、寒気がするような手の触れる感覚を、俺が間違えるはずはない。そのまま俺は前のめりになって水面にダイブした。
水中で目を開けると、ぼんやりと見えてくる白い腕。岩の隙間からゆらゆらと生えているかのように揺れている。この世にこんな気持ち悪い光景があるだろうか。
バラバラに指が動き、白い腕はひたすら揺れている。
幽霊なのか自殺者の死体なのか知らないが、手招きするような動きをする白い腕はとにかく不気味で、一刻も早く水から上がろうと上半身を出した。
だが、絶望的なことが起きた。
そこまで深いわけでもないだろう場所なのに、海草にでも引っ掛かったのか、右足が動かないのだ。引き上げようと俺の手を引く松田にもそれがわかったらしく、松田が応援を呼ぶ。
「助けて!!誰か!!」
その様子に気付いた何人かが石段を降りてやって来る。
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