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3章:乱心
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気にしない。気にしない。そう自分に言いきかせて、十数メール先のエレベーターまできたとき、ふっ、と霊安室を振り向くと、ちょうど誰かが出てきた。
薄紫のニットを着た女の人だった。多分、今日亡くなった二人の患者さんのどちらかの家族なんだろう。泣いているのか、ひどくうなだれていて、肩くらいの長さの髪が震えていたことを覚えている。
こちらに向かってゆっくり歩いてくるそのひとに、職員として声くらい掛けるべきかと思い、俺は近づいた。
「この度は、ご愁傷様でした」
そう言って頭を下げた。
そして、顔をあげて俺は仰天した。
「っ!!」
女の人の顔が、俺の鼻先5センチくらいのところにあったからだ。しかもその表情は、なんていうか、能面みたいな顔で、口元だけがものすごくニンマリしていた。歪んだ笑顔って、ああゆうのを言うんだと思う。
とにかく不気味で、俺は危うくバケツを落としそうになった。女のひとはニンマリ笑ったまま、歩いて行った。言葉も交わさぬまま。ただただニンマリ笑っていた。
そして、その姿が見えなくなって、エレベーターがやっと降りてきたとき。
ガシャンッ!!!と、すごい音がした。霊安室からだった。何事かと思い、走る。するとそこには、
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