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1章:花束
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1章:花束
高校生時代、陸上部で短距離走をやっていた俺は、夜学校が閉まってからも
練習をする熱心なスポーツマンであった。
といっても、学校内に残って練習するわけではなく、自宅周辺の道路を走る
のである。中でも練習に好都合な場所は、100メートル程の長さのある橋の
歩道であった。住宅地では不可能な100メートルダッシュの練習が、
思いっきりできたのだ。だがその橋には縁起の悪い問題があった。
自殺である。
河を渡るために30メートル程の高さがあるその橋は、街灯も少なく、
投身自殺者にとっても絶好のポイントだったのである。
実際、飛び降りポイントらしき橋の中間点には、花が添えられている
ことが多かった。
投身自殺者があの世へ向かう速度よりも速く突っ走ることに
情熱を注いでいた当時の俺は、そんなことはお構いなしに橋を練習に
使っていた。むしろ自殺が起こらないようパトロールしてやる!
くらいの意気込みであった。
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花束 ©著者:hare
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