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1章:道連れ岬
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1章:道連れ岬
深夜十一時。僕とSとKの三人は、その夜、地元では有名なとある自殺スポットに来ていた。
僕らの住む町から、二時間ほど車を走らせると太平洋に出る。そこから海岸沿いの道を少し走ると、ちょうどカーブのところでガードレールが途切れていて、崖が海に向かってぐんとせり出している場所がある。崖から海面までの高さは、素人目で目測して五十メートルくらい。
ここが問題のスポットだ。
もしもあそこから海に飛び込めば、下にある岩礁にかなりの確立で体を打ち付けて、すぐに天国に向けてUターンできるだろう。そしてここは実際にたびたびUターンラッシュが起きる場所でもあるらしい。
『道連れ岬』それがこの崖につけられた名前だった。
僕らは近くのトイレと駐車場のある休憩箇所に車を停め、歩いてその場所に向かった。
「そういやさ。何でここ『道連れ岬』って言うんかな?」
僕は崖までのちょっとした上り坂を歩きながら、今日ここに僕とSを連れて来た張本人であるKに訊いてみた。
「シラネ」
Kはそういってうははと笑う。Sはその隣であくびをかみ殺していた。
「まあ、でもな。噂だけどよ。ここに来ると、なんか無性に死にたくなるらしいぜ?」
「どういうこと?」
「んー、俺が聞いた話の一つにはさ。前に、俺たちみたいに三人でここに見物しに来た奴らがいたらしい。で、そいつらの中で、一人が突然変になって、崖から飛ぼうとしたんだとよ。で、それを止めようとしたもう一人も、巻き添え食らって落ちちまった」
「ふーん」
「……巻き込まれたやつはいい迷惑だな」
Sがかみ殺し損ねたあくびと一緒に小さくつぶやく。眠いのだろう。ちなみに、ここまで運転してきたのはSだ。そういうスポットに行くときはいつも、オカルトマニアのKが提案し、僕が賛同し、Sが足に使われるのだった。
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道連れ岬 ©著者:hare
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