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9章:転落
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「ねえ、英司、お店で心配してるわよ」
その通りだ。
もう、小一時間も『MOON』の周辺を歩き続けている。
「英司?!お店からはあなたに連絡出来ないのよ?!」
珍しく強く冴子に言われ、俺は路地裏で立ち止まり振り向いた。
雨に打たれて歩いたせいで、冴子は髪も化粧も崩れていた。
「いつもそうだ!携帯がちょっと止まっただけでアンタはそうやって怒るんだ!」
「どうしたのよ。話ってそんな事じゃないでしょう?」
冴子はじっと俺の目を見つめている。
「あああああっっっ!!!」
俺は頭を抱えて絶叫し、目からは涙が溢れ出た。
「落ち着いて」
冴子は子供をあやす様に優しく背中をさすって言った。
俺は、事の次第を全て話した。
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