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3章:出会い
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冴子と俺は向かい合う形で座っていた。
ジャスミン茶の入ったグラスの隣には、メンソールのタバコが置いてある。
タバコ吸うんだ?
へえ、意外だな。
冴子はそれを一本抜き取り口唇に持っていく。
ぎこちない仕草から、彼女は左手が不自由なのだと分かった。
すかさず、ライターを差し出すと、冴子はとても驚いた表情を見せた 。
「ありがとう。私、こういうお店は初めてで.....宜しくお願いしますね」
俺は久々に感動した。
タバコに火を付けただけでお礼を言われるなんて。
もし、この人が俺の客になって週に一回でも店に来てくれたらどんなに癒されるだろう。
「あの.....えっと.....」
何か話して盛り上げなくては。
しかし、口下手が災いし俺は焦って汗だくになった。
こんな事してたら、またいつもの様に席替えタイムが始まり他の従業員にあっさり取られてしまう。
そんな俺に冴子は優しく微笑んで言った。
「まだ、あなたのお名前を伺ってないわ」
えっ?
何だって?
この店では名刺を使わない。
俺はなんて阿呆なんだ!
「英司です、英司!英語の英に司ると書きます!」
「素敵な名前ね」
そう言われ、俺は顔から火が出る思いだった。
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