高校を卒業した私は、父と母から逃げるように家を出た。


住み慣れた街を離れ、遠く離れた場所で一から始めようと誓った。


身体の傷も癒え、薄くなった髪も多少生えはじめた頃には、なんとか仕事も決まった。


食品工場で、商品の詰め合わせや梱包をする仕事だ。


住所不特定で、身分証すら持っていない私を雇ってくれた工場長にはとても感謝している。


勤務中あまり他の作業員と話す機会はないが、どうやら私と同じ訳ありの人や、身寄りのない人が多く勤めている。


私はやがてこの場所で、一人の男と出会う。