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9章:惰性 (1/1)

9章:惰性

「でもぉっ……」


「シッ…!」

男は口の前に一本指を立てて、あいつの顔を覗き込んだ。

もう片方の手は肩に回ってる。


「みみ、怖いっ!……もう、帰るっ!」

「せっかくアイツ帰ったんだし、もう少しゆっくりしていこうよ」


気持ちワリイ猫撫で声で、あいつの毛先をいじる指。


「ママが、心配してるかも……」
「…………俺の事、嫌いなの?」


男はアイツの肩に回してた手を外して、立ち上がる。


「俺はみみちゃんの事、すげぇ好きなんだよ…」


中央に細くガラスの入ったドアの前に立ち、自分の上着を器用にドアノブにかけた。
目隠しのつもりなのか。

外から見たら、確かに見え辛いようにはなったかな…



「みみっ……嫌いじゃないけどっ……」

「……じゃあ、好き?」


あいつは下向いて、いつものようにスカートの折り目を小さくいじる。


「名波君が帰っちゃうなんて…思ってなかったから……」


ああ、名波ってあいつか。
いつも金魚のフンみてぇに、糞金玉に付いてる野郎。


「名波はさ、気ぃ利かしてくれたんだよ、きっと」



金玉はあいつの隣にまた座って、肩抱いた。


「んんっ……!!」



唇奪われるとすぐ肩硬直させて…

でもその手はスカートの裾握ったままで…

いつでも抵抗出来んのに。


「ふぅっ…!だっ…ダメ……!」


調子に乗って、手ぇ入れられてる。


「だめえっ!!」


「いいじゃん!……もう、付き合って1ヶ月だよ」


「恥ずかしいっ……見ないでっ!」


「見なければやっていいの?…ねえ!」
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あいつ ©著者:まお

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