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2章:二
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2章:二
それから数日して、夏樹の姿はとあるビルの前にあった。白い外観のあちこちに看板の光る、ありきたりなビルだ。
綾を騙したホストが勤めているのは、二階にある『Honeys』というメンズパブだった。田舎のこの町では、厳密なホストクラブなどどこにもないらしい。
「・・・さてと」
目的のホストに会うまで怪しまれないよう、精一杯のお洒落をした夏樹は、ビルの手前で唸った。残念ながら、彼女はメンズパブやホストクラブの経験がない。バーで話す女の子達を見ていると、予め行く前には連絡するのが筋なようでもある。いきなり乗り込んで追い返されては、元も子もないのだ。
しばらくビルの前で右往左往して、夏樹はやっと覚悟を決めた。エレベーターの前に立って、緊張の面持ちで上へのボタンを押す。
「おわっ!」
「ぎゃぁ!」
後から叫んだのが夏樹だった。ボタンだけ見ていたために、エレベーターが到着していた事に気がつかなかったのだ。
「ごめんごめん、びっくりさせちゃった」
「ぁあ、別に良いよ」
繰り返し言うが、後から応じたのが夏樹だ。
驚きはしたが、大声を出したことで逆に肩の強張りは取れたなと、夏樹は改めてエレベーターに乗り込む。
「ぁ、待って待ってー!」
「は? 何でまた乗ってくるんだよ?」
エレベーターから降りてきた男が、夏樹の後を追って再び乗り込んできた。しかも丁度良い具合にボタンの前に立っているために、エレベーターが動かない。
「どこ行く予定だったの?」
「その前にこっちの質問に答えろ」
いつもだったら殴り飛ばしているが、『Honeys』に着く前に問題は起こしたくなかった。
夏樹はだいぶ不機嫌な顔をしていたはずだが、男は動じなかった。この性格なら、こんな対応をされるのは慣れたものなのだろう。
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