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1章:一 (1/2)

1章:一

「夏樹、もうヤダ・・・助けて、お願い」

 久し振りにバーで会った夏樹の友人は、以前に比べて随分と痩せていた。まだ17歳、二ヶ月ほど前までは、少し丸顔の目立つ愛くるしい少女だったはずだ。
 しかし今、彼女の頬はこけ、疲れきっている。

「え、どうしたの? 綾?」

 目尻に滲んだ涙をお絞りで拭いてやって、夏樹が目を丸くする。20歳の夏樹からすれば、綾は妹のようなものだった。この繁華街の裏手にあるバー『クイーン』で出会ったのは半年くらい前になる。

「あたし・・・怒らないでね、ね?」

 不安そうに夏樹の腕に縋って、綾が何度も首を傾げる。痛々しい仕草だった。
 綾が未成年でバーに通っている事も、高校に行っていない事も、夏樹は知っていた。それでもバイトはしていたし、最近では彼氏と同棲した事もメールで教えられていたため、最初ほど心配はしていなかったのだが。

「なにした?」

 バーの薄暗い照明の中でも白い綾の手を取り、夏樹は静かに聞いた。どんな理由であれ、怒る気はなかった。こんなに悩んで憔悴し切っているのだ、相応の理由があるのだろう。
 夏樹の目が優しくなったのを待って、綾は震える唇を開いた。

「あたし、デリヘルに売られた」

 言った直後、綾の目から涙が流れた。

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誑 ©著者:Eddie

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