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8章:デート
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トイレに入り、冷水で手を入念に洗いクールダウンを試みた。
その行為も虚しく身体の火照りは一向に治まる気配がない。
鏡に映る顔は紅潮している。
飲み過ぎたのだろうか。
…そんな筈はない。
そもそもそんなに飲んではない。
用を足そうと下着を下ろし、愕然とした。
刺激も受けていないのに秘部が潤みを帯びていたのだ。
…何故?
一体どうしてしまったというの?
意思と反して変調する身体になす術もなく呆然としているとドアをノックされ我に返った。
いけない。
早く戻らないと幸一郎君が心配するに違いない。
素早くトイレから出ると、外で順番待ちをしていた女性に頭を下げ、幸一郎君の待つ席に戻った。
案の定、幸一郎君は心配そうにこちらを見つめた。
「樹里さん、顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫だよ。ちょっと暑かっただけ」
平静を装いながら席についた。
「暑いですか?空調の温度を下げてもらいましょうか?」
「ううん。大丈夫」
冷水で冷やした手を頬にあてがった。
少し時間が経てば治るに違いない。
根拠のない可能性に賭け、対話を続けた。
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