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2章:女神との対峙 (5/5)

美優さんの表情にはさっきまでの優美さは消え失せ、鋭い目つきで私を見つめた。


「どこの馬の骨だかわからない人間がコウの髪の毛をベタベタと触るなんて許せないわ!樹里じゃないと駄目よっ!」


美優さんの迫力に圧倒されて、ただ呆然としてしまった。


そんな私の様子を察してか美優さんは落ち着いた口調で話を続けた。


「…コウが樹里のカットに不満を抱くなんてあり得ないわ。あの子はね、どうも出不精なのよ。あまり美に対するこだわりもないみたいだし。私の息子とは思えないでしょ?フフッ♪」


そう言いながら赤ワインを口に運ぶと再び私を見つめた。


「そうね…樹里みたいな髪の色にしてもらいたいわ」


美優さんの手が私の髪を撫でる。


高級感溢れる香水の匂いが鼻先を掠めた。


「アッシュですね。わかりました。一応、幸一郎君と相談してみて大丈夫そうでしたらそうしますね。日程が決まりましたらご連絡下さい」


「そうね。樹里に任せるわ。美しくしてあげてね。ああ…何だか私は酔い過ぎてしまったみたい。目が回るわ」


美優さんはテーブルに片手をつきながら、頬を押さえた。


「えっ、大丈夫ですか?」


「脚にきちゃってるのよ。困ったわ」


「脚はまずいですね。送って行きましょうか?」


美優さんの家はそう遠くはない。


こんな状態の美優さんを放って帰るわけにはいかなかった。


「ごめんなさいね…お願いしてもいいかしら?」


「勿論です」


美優さんは目を細めて微笑むと早々に会計を済ませた。


こうして私は数年ぶりに冬月家に行く事になった。


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禁猟区 ©著者:ゆえ

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