9章:絶縁への道 (78/78)

ある日曜日。


『来月、美香の実家に行こう!!婚姻届にもサインしてもらわないと。』

草野くんが言い出した。そう言う彼の手元には婚姻届が広げてある。



(どうしよう……)


『俺らだけじゃ日程決めらんねーからさ、美香、今から実家に電話してみろよ。な？』



草野くんの目の前で実家に電話………
あからさまに困った顔をした私を見て草野くんは首を傾げる。



『なぁ、美香。ひとつ聞いてもいいか？お前もしかして俺と結婚するのがイヤなの？』


思ってもいない事を言われ、私は首を大きく横に振り否定した。

『そんなわけないじゃん！私は草野くんと結婚したいよ！』



『じゃあなんで美香の実家へ行く話になると微妙な顔とか態度なんだ？』


一番イヤな質問をされてしまい、焦ったがそれも否定した。


『そんなことないよ。ただ、実家までは本当に遠いから草野くんにわざわざ休みを取ってもらうのが悪くて。最近忙しそうだし………』



『お前なぁ、俺達は結婚するんだから挨拶に行くのは当然だろ(笑)そんな事気にすんな！
だからほら、早く電話しろ』

私の携帯を差し出される。



(…もう電話するしかない)


覚悟を決めて発信ボタンを押した。