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そして私は決めた。
もうすぐ1000万の大台に乗る。
その時は、ブランデーを原液で飲んでもらおうと。
私が、毎日のように出勤し、体調が優れなくても頑張った結果が、隣でゲームならば、ハイリスクローリターン。
リスクばかりじゃないか。
それに引き換え、彼は私の卓では黙々とゲーム。
月に2度ほどのデートも、食事や映画。
支払いは全て私。
彼はローリスクハイリターン。
お互いがハイリスクハイリターンでないとバランスがおかしい。
そして私はブランデーを入れた後、彼に詰め寄ったのだった。
「全部イッキしなさいよ。」
言いなりだった私はもういない。
「何で急にイタ客になるの?」
彼は事態が飲み込めずにあたふたしている。
…イタ客?
何もしないアナタの方がよっぽどイタホスよ。
「飲めないのなら、アナタとはもう終わり。」
私はカバンから封筒を出した。
「120万入ってる。先に渡しておくわ。今日の会計で私が使った総額は1000万を超えた。私はアナタの覚悟が見たいだけ。覚悟が本物なら飲めるわよね?」
私は知ってる。
お酒に決して強くない彼を。
アナタはコレで急性アルコール中毒で運ばれる可能性が高い事。
言ってないけど、カバンの中にはもう一つ封筒があるの。
もしアナタがそうなった時は、私が入院費を出して上げるわ。
「そして、もしアナタが死んだら私も死ぬわ。」
追い詰められた担当は、力なくブランデーのビンを受け取った。
「…飲めば良いんだろう。」
深呼吸。
二度。
三度。
張り詰めた空気を壊すように担当は勢いよくビンの先を口につけた。
その刹那、担当の口から茶色い霧のような水しぶきが放たれた。
ゲホゲホと情けなくせき込む担当。
人生でこんなにも幻滅した経験はない。
「さよなら」
私はその場で自らの携帯を逆パカし、店の出口へと向かった。
「お、おい、ちょっと待てよ。」
慌てて追いかけてくる担当。
「最後くらい、No.1らしくしなさいよ。私は客でアナタはホスト。客が帰るとき、アナタの店では何て言うの?」
「…シンデレラ、忘れ物はございませんか?」
店を出た私の目から涙が、溢れた。
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