｢部活が無いと何だか寂しいね！｣

自転車の鍵を外しながら、詩音(シオン)は少し大きめな声で言った。


｢寄り道しないで帰れよ！｣

大輝(ダイキ)は自転車に乗りながら、すぐ寄り道して買い食いをする詩音に忠告した。




詩音は、どこにでもいる様な、ごく普通の私立高校に通う、ごく普通の高校３年生の17歳。


学力も運動もルックスも、全てが普通。
身長にいたっては170cmと、日本の男性で考えても普通。まさに普通の17歳。


17歳らしく、いつも楽しい事ばかり探して、仲間とケタケタ笑い合っているのが何より好き。

そのお陰か、彼女はしばらく出来ていない。


先月まで野球部の副主将として所属していたが、県大会の決勝で惜しくも敗退し、今はただの高校生。
隣にいる主将だった大輝といつも下校を共にしていた。




｢はいはい。今日はタコ焼き我慢しまーす！｣

そう言って詩音は自転車を漕ぎ始め、大輝も一緒に走り始めた。