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9章:ホットココア
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見知らぬ男についていく事なんて、此処に越してきてから何度もあった。風俗のスカウト、ホストのキャッチ、ナンパ。もう、全てにうんざりだった。
そんな私が、欲望溢れるこの街で、しかも一瞬で恋をするなんて、ある意味貴重な経験と言えるだろう。
茶色い長い髪には無数に筋が出来ていて、黒い上下のスーツに、ゴツいネックレスとシルバーリング、先の尖った靴。明らかに彼はホスト。
ホストなんて大嫌い。葵の店は行くけれど、葵の事をホストとして好きかと聞かれると、私は困ってしまう。葵は髪を盛らないし、スーツは着るけどいつもグレーだし、シンプルなアクセサリーしか付けないし、尖った靴もたまにしか履かない。
そんな事を思いつつ、私は喫茶店で、目の前に座るホストをまじまじと眺めた。頼んだホットココアをふーふーして、口に含みながら。
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ワンルーム ©著者:立花 優
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