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1章:第一章 芦ノ湖 湖畔 (1/1)

1章:第一章 芦ノ湖 湖畔

蛍、君はね…。
ほぼ堕されることが決まっていたんだよ。

でも、僕がひっくり返したんだ。

全部僕が説得したんだ。君のお父さんもお母さんも、君のお母さんの親もね…。

だから、僕がいなかったら、君はこの世に存在すらしてないんだ。



大涌谷から桃源台にかかるロープウェイのゴンドラの中で秋生は、窓の外を眺めながらそうつぶやいた。


窓の向こうには、遥か眼下に鈍(にび)色に輝く芦ノ湖が望める。


その鏡のような水面を、遊覧船が白い波を立てながら、ゆっくりと浮かんでいる。

「まるでおもちゃのようだな」

と秋生はひとりごとのようにつぶやいた。


今、こうして 私の結婚式を間近に控えて、突然寂しくなったのか…

自分が育てた娘を、いよいよ手放さければならなくなった父のような気持ちになったのか、
それは私には判らないけれど、

ここ、思い出の場所、箱根に来て急に秋生はあのときの続きの話をし出しのだった。


今朝、急に電話がかかって来て、

「天気がいいから箱根に行こう」


そう言われたときから、何となく私にはわかっていた。


何かあると秋生はいつも箱根に連れて来てくれたからだ。


子供の頃。

そう、父が私が小学校6年生のときに他界してからは、寂しい姉妹を不憫に思ってくれて、ときどきここに連れて来てくれたっけ。


秋生は父と母の友達で親子共々お世話になってきた大切な私たちのおじさんだ。


そのおじさんが今こうして考え深めに何かを語ろうとしている。


わたしもいつか、この日がくることを、ずーっと昔から待っていたような気がする。



ふと、優しい沈黙の時間が訪れた。

決して悪くない沈黙だ。秋生の優しい眼差しがまぶしい。



西の空を観るともなく眺めた。

深みのある蒼い色をした金時山が黒々とそびえ立ち、その向こうにうっすらと新雪の帽子を被った富士山が遠くに霞んで見えた。


今日のことをいつまでも覚えているんだろうなという予感が、ふと、頭をよぎった。

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セキララ ©著者:吾が肺は2個

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