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28章:実況中継 (1/1)

28章:実況中継

そのお店の中に入るとさっきの親子がいた。

彼らはバルコニーの外にあるテーブルに付き、深い木立の森のすぐ手前で食事を終えたばかりのようだった。

私達はそのすぐ近くのウインドの内側にある席についた。

「ねぇ、見て。さっきの二人連れがいるね」
私はそう言いながら、何故か心温まる思いになっていた。

どんな話しをしているんだろうね…。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、龍一はイタズラっぽい目を輝かせて、

デタラメな二人の会話を即興で始めるのだった。

娘「ハゲてるやん」

父「いや、ハゲてはないよ」

娘「ハゲてるやん(笑)」

私「ブファっ!!……」

なんだそりゃ?
ハマちゃん?(笑)


ウィンド越しの和やかに談笑している親子と龍ちゃんの笑顔を交互に見比べ、思わず声をあげて笑いそうになってしまった。

実況中継ですか…


丁度そのとき、お店の店員さんがオーダーを取りにやって来てて、笑われてしまったけど…。


注文したのはごくごくシンプルなせいろ蕎麦と、私が岩魚の塩焼きで、龍ちゃんは天ぷら盛り合わせ。


白いわさびには驚いたけど、刻み海苔とふんわりとした雪のように薄切りにされたネギとの絶妙なハーモニーには、文字通り舌を巻いた。


薬味とわさびをつゆの中で溶いて、蕎麦に絡ませると、もう芸術的な味に変化する。


一口すすっただけで、この味は、家で出すのはまず無理だと一瞬にして分かってしまう。

「何、これ?」

私はあまりにも美味しいよという泣きそうな表情になる。

龍ちゃんは、
「な?すげーだろ!」
と言って、まるで鬼の首でも取ったような勝ち誇った顔をする。


あんたが作ったわけじゃないだろう〜 と思わず突っ込みたくなったけど、勿論、口に出しては言わない。


それにしても美味しい。
どうやってこんな腰を出すのだろう。

蕎麦殻を混ぜた十割蕎麦なら普通、ぶつぶつ切れてこんな腰にはならないはずなのに。

細くてつやつやした瑞々しい麺は光輝いていた。

薬味として付いて来た薄くスライスされたトロロ芋を箸で摘むとサクっと割れた。


わさび醤油に付けて口に含むとザクザクとした歯ごたえが気持ち良い。


ちょっとした小さな工夫の積み重ねが、こんな芸術的領域にまで料理を昇華させるんだ…。


食べ物で感動するのなんて本当に久しぶりだった。
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セキララ ©著者:吾が肺は2個

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