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19章:第ニ章 軽井沢
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19章:第ニ章 軽井沢
龍ちゃん ごめんね。
私はそう言ったまま、手を口にあてて、ポロポロ涙をこぼしてしまった。
公衆の面前だというのに不覚にも泣いてしまった。
知らない人がみたら、男が女を泣かせたみたいに見えたかも知れない。
ヤバい…。
久しぶりに休暇を合わせて旅行したのは軽井沢。
晴れ晴れとした春の日差しに照らされて、浅間山は真っ青にその雄大な姿を見せていた。
所々に雪がまだ残っていて、キラキラ輝いていた。
ゴールデンウイークの前の軽井沢駅前は人影まばらで、わずかばかりの観光客と地元の人しかいなかった。
誰も彼もが穏やかな表情をしている。
駅に降り立って、改札を抜けたらあたり一面が大自然。
ぐるりと見回しても高いビルなんか一つもない。
ひんやりとした空気がブラウスの中を通り抜けて、フワッと膨らんだ。
すがすがしい気持ちが込み上げてきたときのことである。
嬉しかった…。
旅行なんて一年ぶりだった。
思わず私は泣き出してしまったのだった。
龍一は昨日遅くまで残業していたから疲れていた。
東京駅から「あさま」に乗り席に着いた途端から寝ていた。
蛍に揺り起こされて眠い目をこすりながらぼーっと歩いていたが、目の前に広がる景色に心洗われる思いがした。
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