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39章:いつもとおんなじ笑顔で
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39章:いつもとおんなじ笑顔で
ふと、時計をみると夕食の時間が迫っていた。
あら、大変!
急いで、お化粧し直さなくっちゃ…。
今日のお客さんは私たち二人だけだから、貸し切りみたいなものだった。何だか贅沢な気分(笑)
ダイニングでは、今頃龍ちゃんとオーナーさんは楽しく歓談しているに違いない。
もう私は泣いていなかった。
鏡に向かって、一番得意な笑顔で笑ってみた。
うん、蛍ちゃん今日も可愛い(笑)
龍ちゃんが好きだと言ってくれた笑顔が出来た。
急いで、化粧を済まし部屋を出て行くときに、私はもう一度部屋を振り返った。
1980年にここにいた、白い影の優しい人たちに向かって。
私も約束をする。
うんと幸せになって、その姿をみて貰うのが、本当の親孝行だと思うから。
今は天国にいる父にも約束をした。
絶対幸せになるからね。
育ててくれて、本当にありがとうございました。そう挨拶をして部屋を出た。
ドアを閉めるときは、ゆっくり丁寧に扉を閉じた。
カチッと小さな鍵がかかる音がした。
それは不幸を閉じ込める鍵と幸福の扉を開く鍵の音だった。
願いと誓い。
その2つ。
廊下に出ると美味しそうなシチューの匂いが漂っていた。
んん…いい匂い。
空気は澄んでいたけど、冷え込んでいた。
そして私は今、柔らかな絨毯敷の廊下を晴れがましい気持ちで、ドキドキしながらゆっくり歩いているところ…。
完
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セキララ ©著者:吾が肺は2個
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