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38章:蛍の群れ
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38章:蛍の群れ
ふと、窓の外に目をやると、さっきポワンとついた常夜灯の灯りが、今は暖かい光を爛々と輝かせていた。
あっという間に闇が広がり、辺りはすっかり暮れていた。
何の虫か分からないけど、その灯りの下に小さな虫が群がっていた。
光のシャワーに照らされて、そこだけ雪が舞っているように見えた。
小さな小さな蛍が群れを作っているみたい見えた。
思わず私はまたバルコニーに出てみた。
不思議にも、さっきバルコニーへ出た時とは全然気分が違う。
今は晴れやかな気持ちだった。
生まれ来て良かった。
お母さん、私を生んでくれてありがとうと素直に言える。
そうだ。私にはまた聞こえたのだ。この部屋で交わされた約束が。
私の養父の春樹と秋生さんは、多分、二人揃ってこう言った。
俺、その子の父親になるよ。
私の養母も約束してくれた。
じゃあ、私は叔母になる。
その声を聞いて私は生まれたいよと母にシグナルを送った。
実母も、うん、生まれ来てね、待ってるから。そういうシグナルを返してくれた。
そういうやりとりがここであったのだ。
全ては私の想像だけど。
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