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34章:このペンションに来た意味
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34章:このペンションに来た意味
涙と鼻水とよだれとお茶の湯気でぐちゃぐちゃになった顔も、
優しい風に吹かれて乾いてきたから、部屋へ戻ってみた。
テーブルには、
「下の談話室にいるよ
気分が落ち着いたら降りておいで」
というメモが置いてあった。
こういうちょっとした短い手紙、龍ちゃんは本当に上手いし優しい。
そして、だんだん分かって来た。
このペンションに来た意味を。
私が胎児で、実のお母さんのお腹にいたときに、この宿へ両親たちはこの部屋に泊まった。
もう一度、気持ちに区切りをつけなさい。多分、そんな意味なんだ。私はそう受け止めた。
この部屋で、かつて語らった人々の白い影を思い浮かべて、耳を澄ませば聞こえてくるような気がする。
私は一旦顔を洗って、タオルで拭いて、もう一度、お茶を入れ直した。
そしてふうっと、自分の心の声に耳を澄ませてみた。
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