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10章:朝のひととき
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10章:朝のひととき
今、私のかたわらには、年老いて起き抜けの真っ白な顔をした母がいる。
私はひとりで大きくなったような顔をして、二人分の朝食と、婚約者のお弁当を手際よく作ってる。
みんな母から教えてもらった技だ。
玉子焼きには、ほんの少しマヨネーズを混ぜて溶いてから焼くとふっくらするとか、
ネギトロのトロの部分を梅肉に変えて、ネギをごま油でほんの少し炒めてかつお節をまぶすと、とても美味しくて上品なおばんざいになるとか…。
そんな他愛もない細かい一つ一つも、母の多大な愛の結晶だった。
「お味噌汁何にする?」
「お豆腐があるよ」
「大根の葉っぱもあるね、どっちがいい?両方入れちゃおうか(笑)」
「任せるよ」と言って母は着替えに席をたった。
夜が明けて来た。
朝の清々しい空気が光る。
いろんな鳥たちがそれぞれの歌を競うように歌い上げ飛び交う。
窓の外には珍しいハクセキレイが来ていた。
私は嬉しくて思わず脈拍が速くなる。
ピカピカの笑顔で外を眺めていたら母が戻ってきて私を見るなり、
「何?どうしたの?」
「ううん、可愛い鳥がいたから…」
「でも、大変だね…龍一さん、休日出勤かい」
「え
…」
親が親なら子も子である。血は争えない…。
今日は土曜日だった…。
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