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9章:やがて哀しきお弁当 (1/2)

9章:やがて哀しきお弁当

はじめての男の子とふたりだけのデートは素敵だった。

なんと中学生同士のいきなりの夜デート。
6月の横浜開港記念日の花火。


山下公園のめまいがするようなもの凄い人ごみの中で、はぐれないようにと、しっかり手をつないでくれたときのときめきは、今も鮮明に胸の中にある。


お弁当事件はそれから4ヶ月後の秋の野毛山動物園での出来事。


桜木町からもみじ坂を登りつめた辺りに入場無料の動物園がある。


中学生のデートなんてバリエーションは限られていて…


大体、映画に行くか、遊園地に行くか、動物園、水族館、後は公園くらいなもんだろう。


もとよりお小遣いが少ない中学生である。自然と無料の動物園という選択になる。

デート前日まで長雨が降り続いていた。
デート当日は見事な晴れになった。それが返ってあだになった。

想像してみてほしい。
雨上がりの後の動物園を…。


何処へ行っても、何を食べても、山羊のチーズの匂いがする。おまけにお手製のお弁当のサンドイッチの中身はチーズとハムと玉子である。

よせばいいのに、スペシャルメニューで、カツサンドと唐揚げとサラダと、デザートにうさぎリンゴまで作っていった。

口にこそ出さなかったが、唐揚げはラクダを食べているみたいな気がしたし、キャベツなんか干し草を連想させた。

彼は「旨いよ」と言いながら顔が引きつっていた。
私も情けない気持ちだったけど、「ありがとう」と精一杯応えた。

けれどもそんな所で何を食べても、食欲なんてあるわけがない。

当たり前だけど、残してしまいそうになった。


確かキリンの小屋の前のベンチだった思う。

何故か孔雀が放し飼いになっていて、「ねぇ、何食べてんの?豆なら少し分けてちょうだい」というふうに覗き込んで来た。


彼は何を血迷ったか「ほら、食え!!」とサンドイッチを投げ与えた。


私は彼の行動が信じられなかった。というより悲しかった。


孔雀も、「そんなもの食えるか!」というふうに、きびすを返してスタコラどっかへ行ってしまった。


確かに場所も味も、たいしたことない物だったかも知れない。食欲もなかったかも知れない。

でも一生懸命作ったお弁当を目の前で放り投げられたのだ。

100年の恋も冷めるというものだ。


かくして私の淡い初恋は泡のように消えていった。動物園の匂いとともに…。
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セキララ ©著者:吾が肺は2個

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