２年前の、九十九里海岸

柳本光と、彼女のミドリは

サーフィンをするため

沖に来ていた



その日、波は穏やかで

パドリングで岸から離れ

二人、波待ちをしていた

海は、凪ぎかぜ

鏡のような、静かな海面

突発的なオンショア

強風がおきた

遠く彼方の水平線が白く泡立つ

あっという間に、BIGWAVEが

二人に襲いかかる



濁流に揉まれながら

光はなんとか岸に辿り着いた

しかし、ミドリは

技術的に未熟だった

荒波にコントロールを失い

少し離れたテトラポットに

頭を強打し帰らぬ人になった



光は

この日からサーフィンをやめ

恋愛にも心を閉ざしてしまった

光の両親は

イタリアで暮らしている

一緒に移住を勧められたが

ミドリの事が吹っ切れず

日本を離れることが

できないのだ