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10章:慟哭
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僕は放心状態になった。
どうやら僕が珈琲を淹れにリビングに戻ってた間にスケッチブックを見たらしい。
僕は今まで繭に疚しい事なんて何一つなかったから部屋の中のものを見られる事に抵抗はなかった。
繭も漁るような性格ではなかったが、たまにアルバムやスケッチブックを僕の前で見たりしていた。
何て事だ…。
「最近、マユと会ってくれなかったのは玲奈さんと会ってたからなんだね…」
繭はそう呟くと俯き、大粒の涙を流した。
「繭…」
言葉が見つからない。
「確かに玲奈さんの代わりでもいいって言ったのはマユだけど、やっぱりつらいよ。マユは…マユは玲奈さんじゃない!玲奈さんにはなれないのっ!」
そう言うと繭は鞄を持ち、部屋を飛び出した。
反射的に繭を追おうと身体が動いたが、深く深呼吸をするとベッドに座り込んだ。
今追い掛けたところで繭にどう説明するつもりだ?
何も言えないだろう。
少し頭を落ち着かせよう。
コルクボードに貼ってある繭の写真をぼんやりと眺めた。
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鏡花水月 ©著者:ゆえ
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