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10章:慟哭
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繭から放たれるいい匂いに翻弄されそうになったが、寸でのところで踏みとどまった。
「おいっ!繭!よせってば」
必死に繭を押し戻すも退く気配はない。
「いいじゃん…ね?」
繭は僕に馬乗りになった状態で上半身を起こすと、リボンタイを外し、ベストを脱いだ。
「ばっ、馬鹿っ!勉強を…」
「そんな事言わないで」
そう言いながら僕の手を自らの胸に持っていった。
ブラウス越しに豊満な胸の感触が伝わる。
「いち君…」
言葉とは裏腹に身体が熱くなっているのが自分でもわかった。
「……!!」
口唇が重なろうとした瞬間、繭と玲奈が重なって見え、思わず顔を背けた。
「…いち君?」
「繭…どいて」
繭は押し黙ると僕の上から離れた。
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
「勉強再開しようか」
そう言って起き上がろうとした瞬間、繭が口を開いた。
「…ねぇ、マユっていち君の何なのかな」
「…え?何言ってんの?」
繭はベッドに座り込んだまま、俯いている。
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