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9章:追求
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もうどれくらい経っただろうか。
二人とも押し黙ったまま悪戯に時間だけが過ぎていった。
「…スケッチブック?」
沈黙を先に破ったのは玲奈のほうだった。
僕の小脇に抱えられたスケッチブックが目に入ったらしい。
「ああ、僕は美術部だから」
「そう。いちは昔から絵が上手だったもんね。よく私の絵を描いてくれてたわね」
玲奈は懐かしそうに微笑んだ。
「話を逸らすなよ。質問に答えてくれ」
玲奈は観念したかのようにため息をついた。
「…私の絵を描いて」
「は?」
「もう一度、いちに私の絵を描いてほしいの。そしたら教えてあげるわ」
玲奈はそう言うと裏庭の隅に置いてあるくたびれたベンチに腰掛けた。
流暢な事を言う玲奈に苛立ちを感じたが、従わなければ教えてもらえないのは明確だった。
「…約束だぞ」
僕はスケッチブックを開き鞄から鉛筆を取り出すと、玲奈と十分な間合いを取り、デッサンを始めた。
クソッ…
何だってこんなところでデッサンなんて。
苛立つ僕とは裏腹に玲奈は嬉しそうに微笑んでいた。
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