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8章:不協和音
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次の日も僕は団地に足を運んだ。
昨日の非礼を詫びたかったから。
それも単なる口実で実は玲奈に会いたかっただけなのかもしれない。
玲奈は相変わらず何事もなかったかのように接してくれた。
僕が昨日の件について詫びると玲奈は“大丈夫”と笑顔を浮かべた。
何をするわけでもなく団地の裏庭で過ごす玲奈との時間。
何故だか心が休まった。
「こうやって私と会うのは彼女も快く思わないんじゃない?」
繭に対する罪悪感はあるものの、それから数回に亘り玲奈と密会を繰り返した。
相変わらず自分の事を何も語らない玲奈。
今はどこに住んでいるのだろうか。
恋人は居るのだろうか。
玲奈は毎日ここに居る。
夢は叶わなかったのだろう。
僕の記憶が正しければ、玲奈は今年で26歳になる。
もし夢を達成させているならこんなところに毎日来る余裕なんかないはずだ。
9年前に医者になる夢を目を輝かせながら語っていた玲奈。
それを思うと追求出来なかった。
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鏡花水月 ©著者:ゆえ
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