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5章:繭
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駅に着くと繭は既に到着していた。
「いちく〜ん♪お疲れ様ぁ」
繭は飼い主を見つけた仔犬のようにはしゃいだ。
ホームで電車を待つ間、繭はさっきあった出来事を興奮しながら話してきた。
ふと、反対側のホームを見て僕は固まった。
玲奈?!
次の瞬間、反対側のホームに電車が到着し、通り過ぎた時には既にその姿はなかった。
「…いち君、聞いてる?」
繭が怪訝そうな顔をして覗き込んできた。
「…え?ああ、聞いてるよ」
「嘘だぁ!いち君のそういう時って絶対聞いてないから。疲れてるんだねぇ」
「ああ、ちょっとね。ごめん。夕飯はうちで食べてくんだろ?小百合さんに連絡しないと」
「大丈夫だよ〜。さっき小百合さんにはメールしといたから♪」
タイミングよく電車が到着し、僕達は乗り込んだ。
それにしても、さっきのあの女性…間違いなく玲奈だった。
反対側の方向の電車に乗ったんだよな?
「いち君、また上の空になってるぅ〜」
繭はそう言うと頬を膨らませた。
「ごめん。大丈夫だから」
口ではそう言いつつも頭の中は玲奈でいっぱいになっていた。
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鏡花水月 ©著者:ゆえ
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