「こらっ！ワンコはいつになったら、彼女を作るんだよおおおおう」


もう馴染みになって長いアキさんがカウンターで、空っぽになったボトルを振り回す。

週末にありがちの光景に、軽く目眩を覚える。
僕はいつものように決まった言葉で返す。

「僕はいつでも出会いを待ってるんですけどね。とっても誠実に！」

アキさんは、大声で笑う。

「ハイハイ！こんな店にいちゃあ、運命のお姫様とやらに会えるわけないー！」

そして、最高のタイミングで、
アキさんの王子様は現れる。

「あれれ？アキ姫の運命の王子様は、このお店にいる、この僕ではないのでしょうか？」

手の甲にキスをする。
キザ過ぎる仕草すら、さまになる人。


ワンコ「犬」の僕は、そっと席を立つ。