それから二ヶ月後。



章と食事に行く為、いつもより念入りに化粧をしている私がいた。



章があれからお店に来たのは二回。


それも収録の間の本当に短時間だけだったが、電話やメールは一日も欠かす事はなかった。


彼がどのような意図で連絡して来ていたのかはわからないが…



彼と取り合う連絡が、いつの間にか私の中で少しずつ大切なものになって来ている事は確かだった。


そして連絡を取り合ううちに、私達はお互いを"瀬奈"、"章"と呼び合うようになっていた。




実際の章はテレビで見るタレントの橘章とは少し違った。


タレントの橘章は少し気取っているというか、落ち着いている大人の男を装っている感じ。


プライベートの章は、それよりももう少しやんちゃさが残る感じ。


ただ、どちらの章にも共通しているのは…あのフニャっとした優しい笑顔だった。


あの笑顔は、彼の最大の武器だと思う。



あの笑顔に、きっとファンの方々は引き付けられたんだろう。


画面の中で章を見つける度、私は何ともいえない不思議な感覚に陥っていた。


この頃の私は、章の番組を見つけては録画を繰り返す日々…



熱狂的なファンのようだが、今考えてもこの時はまだ彼の事を"一人の男性"として…というより"芸能人"として見ていたような気がする。