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42章:出会い
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42章:出会い
今のこの関係は、母親にとってもワタシにとっても丁度良い、と思っていたが、その考えを変えたのが、あるお客様との出会いだった。
初めてフリーで会った時の印象は、
【目の奥が冷たくて、なに考えてるのか分からなくて怖い】
だ。
お客様ノートには
【モグタン系、楽、謎、?】
と、暗号めいた事しか書いてなかったので、指名が戻った時にノートを見直しても、どう接客して良いか分からなくて非常に困った。
会話を振りつつ探りを入れたが、
【リアクション薄、甘いの好き?好き嫌い激しい?独身?】
など、良く分からない事が追加され、更には
【あきたこまち・チーズケーキ好き】
が書き加えられ、ついにワタシの頭がイカレた。
それでも月に2・3回は通ってくれたので、有り難いお客様だったが、会話も一方通行が多いし、なぜワタシを指名してくるのか疑問だった。
そんなある日の事。
とうとう振るネタも尽き、困ったワタシは思い切って聞いてみた。
『ワタシといて楽しい?』
指名して下さるのは有り難いが、どう対処してよいか分からないので、半ば切れてもいいと、ヤケになったのもある。
すると
『君は何だね、闇を抱えてるね。それを必死に誤魔化してるのが面白い。』
…はぃ?
全く意味が分からなかった。
『何ですかー?急に。』
笑顔を取り繕ったが、引きつっていたのか、
『ほら、そこ。そう言う誤魔化しが面白い。て言うか、もしかしたら君自身気がついていないのかもね。でも、潜在意識は覚えてるよ。』
確か、こんな事を言ったと思う。
何なんだ、この人。
おちょくっているのか?
返事に困っていると、
『自分でも気がついてないようだね。そして、僕にムカついてるね。』
本当に何なの?
でも、
【はい、ムカついてます。】
なんて言える訳もなく
『そんな事ないですけど、ワタシ頭悪いので、意味が分かりません。』
そう答えるしかなかった。
でも正直、ムカついている。
そして、仕事がやりづらい。
【切れて結構!】
と思ってしまったので、いつもお客様をお見送りする時にキスをしていたのだか、この時はやらなかった。
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