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4章:涙のあとに…
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「…それにね、明日美さんには…人への思いやりと優しさがあるわ。とても素敵な事よ。
だからね、焦ることないわ。これからの人生、色んな経験をして、いっぱい悩んで、いっぱい泣いて…そしてその分同じくらい…いえ、それ以上に、楽しいこと幸せなことがあるわ。」
おばあさんはにっこりと微笑むと、窓から差し込む日の光りと重なってとても儚いものに思えてきて、胸がキュッと優しく痛んだ。
『…ありがとう…おばあさん…。』
と久しぶりに素直な感謝の言葉を言えた。
それから私は仕事が休みの日はおばあさん家に遊びに行くようになり、おばあさんも快く迎えてくれた…そしてふてぶてしい黒猫も一緒に。
そんなある日、仕事が休みでいつもどおりおばあさんの家へお邪魔しているときだった。
―…ガタガタッ…―
『…ッッ!?おばあちゃん!?大丈夫?!』
おばあちゃんがソファーから立ち上がった瞬間、よろけたのを私は慌てて抱きとめた。
「…ああ…ありがとう…明日美ちゃん…ごめんね少し目眩がして…ベッドに横になっていいかい…?」
『…うん。大丈夫?ゆっくりね。』
私はおばあちゃんを支えながら寝室へと向かったが、
…力が入らない人を支えるのってこんなに重たく感じるものなんだ…。
おばあちゃんは決して太ってはいないし身長も私より低い。
私はなんとか腕に力を入れておばあちゃんをベッドに横たわらせた。
『…大丈夫?お医者さん呼ぼうか…?』
私の問い掛けにおばあちゃんはゆっくりと首を振った。
「大丈夫よ。少し横になっていれば…ごめんなさいね驚かせてしまって。」
『ううん…おばあちゃん何かしてほしいことある?食べたい物は?』
―…ニャァニャァ〜…―
クロも心配そうにベッドの下をウロウロしていた。
「ふふ。本当に大丈夫よ…でもそうね…明日美ちゃんの子供の頃の話し…聞かせてちょうだい。」
『…えっ?私の…?う〜ん私は昔から勉強は嫌いで…でも国語と体育と美術は好きで…』
おばあちゃんは私の話をゆっくり頷き微笑みながら聞いていたが、いつしか小さく寝息をたてはじめたので私はおばあちゃんを起こさないようにクロと一緒に静かに家を出た。
その日は家に帰っても、おばあちゃんの事を考えていた。
…何か自分にできることはないかと。
…そんなふうに誰かのために役に立ちたいと思えたのは初めてだった…。
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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