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4章:涙のあとに…
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「―…明日美さん…。」
おばあさんは柔らかい手のひらでそっと私の手を包んでくれた。
私は泣いていた。
でもそれは部屋の中で1人ぼっちで涙する時とは違った…氷が溶けるような、心が涙で冷たくならず、むしろ心が暖かくなっていくようだった。
そして、心の焦りは涙に…涙は言葉にかわっていく。
『…おばあさん…私ね、自分が嫌いなの。
…自分には何もないから他人に嫉妬したりするの…なりたい夢もないし、やりたい事もない…毎日が不安で仕方ないの…。』
おばあさんは私が話す一つ一つの言葉にゆっくりうなずいてくれて、そして大事そうに私の手を優しく撫でてくれていた。
『…友達が自分の進む道を見つけると、私…置いていかれた気持ちになって…それで、どんどん動けなくなって…』
私は力なく首を振った。
『…違う。本当は違うって解ってるの他人がどうのって事じゃなくて…自分が…自分が…』
私が言葉に詰まると、おばあさんはそっとハンカチで涙をふいてくれた。
「…明日美さん…私はね…自分の進む道を明確に解っている人は、きっとそんなにたくさんいないんじゃないかと思うわ。
…みんな明日美さんのように、いっぱい悩んで…たとえやりたい事を見つけても、失敗したり、立ち止まったりして…
それでも自分の中にある可能性を信じてなんとか前に進もうと努力して行くんじゃないかしら…。」
おばあさんは私の目を真っ直ぐ優しく見つめて話し続けた。
「お友達へ嫉妬してもそれはね、とても自然な事よ。何も恥じることはないわ。
人はとても欲深い生き物よ。どんなに自分へ自信があっても他人への嫉妬は無くなったりしないわ…。
私みたいなおばあさんでもね、ふふっ。今でも嫉妬するわ。
でもね、明日美さん。
他人への感心や他人の評価を気にしなくなったら“自分”という“個”が無くなってしまうんじゃないかしら。
自分には“何もない”から嫉妬するのではなくて、自分には他人に負けない“何かある”と思うから嫉妬したり、負けたくないと思うから焦ったりするのだと私は思うわ。」
おばあさんの言葉は私の胸に素直に響いてきた。
…そうか…私はまだ諦めていなかったんだ…。
私は今まで“自分に何もない”と思って逃げていたのかもしれない…何もないから、何もしない…その方が楽だから…
でも心の奥底の私はそれを許さなかったんだ…
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