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3章:クロの正体?
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『おはようございま〜す!』
街に街灯が灯る時間に私の仕事は始まる。いつもとは違う、心のなかに暖かさを感じながら私は店に出勤した。
「…おはよう明日美サン。なんか今日は元気だね!笑顔が輝いてとても綺麗だよ。」
店長のいつもの鳥肌のたつキザな台詞も笑顔で受け流せるくらい、なんだか私は余裕があった。
『ありがとう。店長もあぶらとり紙3枚分くらい輝いてるよ♪』
更衣室に入ると愛チャンがヘアメイクをしていた。携帯片手に舌打ちしている…なんだか少し機嫌が悪そうだ。
『おはよう。愛チャン。どうかしたの?』
「あっ!明日美チャン!おはよ〜…聞いてよ!…あ。いや、今はいいや…今日終わったら付き合ってくれる?」
きっと彼氏の事だろう。周りの女の子がいる手前あまり大きな声では言えないようだ。
『いいよ。私、明日休みだし。』
私達が話しているとちょうど瑞希チャンが入ってきて結局いつもの3人で飲みに行くことになった。
オープンすると週末もあってか、直ぐに指名が入った。
『ひろクン。今日も来てくれてありがと〜』
ひろクンは私のお客さんになって1年になり、私の出勤日はだいたい飲みに来てくれる。
お気に入りはカウンターの端の席でいつも1人…まぁちょっとオタク気味ではあるけど、いい人ではある。
「…ん?明日美チャン…香水変えた?なんかいつもと違ういいにおいがする。」
『それって私がいつもクサイって事?!』
ひろクンは眼鏡を押さえながら私に背を向けて肩を揺らした。…ひろクンの笑うときのクセだ。
「違うよ。いつもの香水も良いけど、今日はもっと…甘くて澄んだにおいがする。」
『…すごいね。実は香水じゃないんだ。今日ねお風呂に金木犀のポプリを入れたんだ。』
今朝、おばあさんから貰った小さな袋には、あの金木犀のポプリが入っていた。
湯船に浮かべるとお風呂場いっぱいに甘くて澄んだ香りが広がりとてもリラックスできた。でもそれだけではなく、最近は睡眠薬を飲まないと寝れなかったのだが、今日は薬を飲まなくてもとてもぐっすり眠れたのだ。
「…ポプリか。うん。いいね。」
ひろクンは納得したように水割りを一口飲んだ。
『…ねぇ。話し変わるんだけど、…ひろクンって…その…尻尾が2本ある猫って見たことある?』
ひろクンは眼鏡を指でクイッと掛けなおすと私をチラッと見て、
「…それって“猫又”のこと?」
と言った。
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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