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2章:黒猫を追って…
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―…ニャァ〜ニャァ〜…―
クロがいつの間にか扉の前に移動していた。
「はいはい。お出かけかい?」
おばあさんは、よいしょと声をかけて立ち上がった。
『…おばあさん私も長い時間お邪魔しちゃってスイマセン…クロと一緒に出ます。いっぱいご馳走になっちゃって…ありがとうございました。ぶどうパンもハーブティーもすっごく美味しかったです!』
「…そう…?残念ね…明日美さん。良かったらまたいつでも遊びに来てちょうだい…あっ…それとこれ良かったらどうぞ。お風呂に入れるととてもリラックスするわ。」
おばあさんは小さな袋を渡してくれた。
『…ありがとうございます。…あの…本当にまた遊びにきてもいいですか?』
「えぇ!もちろんよ。…でも次は玄関からいらっしゃいね。ふふっ。」
おばあさんは先ほどの私の姿を思い出したのか笑い、私は耳が熱くなるのを感じながら一緒に笑った。
外の階段の手前までおばあさんは送ってくれた。私はおばあさんに手を振りおばあさんの家を後にした。
階段を降りてわかったが、おばあさんの家は小高い丘のようになっていて階段は段数も多く、きっとおばあさんには大変だろうと思った。
―…ニャァ…―
気づくとクロは向かいの家の塀にのぼってこちらを見ている。
『―…あッ!やっぱり…』
やはり見間違いではなく、クロの尻尾は2本あった。
―…ニャァ〜…―
『…あっ。行っちゃった。』
今度こそ、ついてこれないであろう早さでクロは行ってしまった。
私はまた会えるだろうと思い自宅へと、もと来た道を帰ることにした。
自宅へとブラブラと歩いていると、きっとおばあさんに出会ったからだろう…昔亡くなった祖母の事ばかり思い出していた。
私の両親は共働きで、祖母に預けられることも多く、私は明るく優しい祖母が大好きだった…。
そう言えば、祖母の墓参りに最近行ってないことを思い出し、たまには実家に帰り墓参りに行こうかと、思えた。
そんなふうに素直に思えるのはきっと、あのおばあさんの優しさに触れ合えたからだろう…。
私は胸の奥が懐かしさと、おばあさんの優しさで暖かくなっていくのを感じ、深呼吸をした。
4月の爽やかな風が心地よくふきぬけた。私は足取り軽く家に帰った。
…優しいおばあさんとの出会い。
これがあの妙な黒猫が私にくれた素敵で…
切ない出会いだった。
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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