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2章:黒猫を追って…
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黒猫は住宅街をトコトコ歩き、時々こちらを振り向く。
私は、とっくに自宅を通り過ぎて知らない道へと歩いていく黒猫を追って行った。
少し坂道を上った小路に黒猫が入って行くと、私も続いて小路に入った。
『―…ぁれっ…?』
小路に入ると黒猫の姿がいなくなっていた。
辺りを見渡すと垣根の隙間がぽっかり穴が開いていて通り抜けられそうになっていた。
『…あそこに入って行ったのかな…』
私は辺りをキョロキョロ見渡し人がいない事を確認し、意を決して這いつくばりながらその穴を通り抜けた。
穴を通り抜け、土や葉っぱを払いながら立ち上がり顔を上げると…私は思わず息をのんだ。
そこは日当たりが良く朝日をうけキラキラ輝く色鮮やかな花々や、野菜畑が広がっていた。そして、一際目立つオレンジ色の小さな花をつけた木が立っていた。
甘くて澄んだ香りに誘われてその木に近寄ってみるとより一層甘い香りが胸いっぱいに広がる。
『―…いい香り…これなんて花なんだろ…』
そっと花に手を伸ばすと、
「…それはね。金木犀と言うのよ。とてもいい香りでしょう?」
『…ッッ!?』
バッと声をした方を振り返ると、そこにはクリーム色のショールを羽織った、品の良さそうなおばあさんが黒猫を抱きながら立っていた。
『…あっッッ…す…スイマセン。勝手に入っちゃって…あ、怪しいものではないんですけど…』
おばあさんは怪しむどころかゆったりとした足取りで私に近寄り、
「…あらあら。頭に葉っぱがついているわ。」
そう言うとそっと葉っぱを取ってくれた。
おばあさんは優しい笑顔で微笑むと、黒猫を撫でながらゆったりとした口調で話した。
「…クロがお客さん連れて来たって言うから見に来たら…こんな可愛らしいお嬢さん連れてくるなんて…ふふ。クロもやるわねぇ。」
おばあさんに撫でられて黒猫は気持ちよさそうにしている。
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黒の扉 〜金木犀〜 ©著者:金木犀
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