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1章:プロローグ (1/4)

1章:プロローグ

私のその能力〜人の心が読める能力に最初に気づいたのは母だった。

赤ん坊は、母親の情緒を反映すると言われるから、まだ話せない乳飲み子の頃は『あらあら、お母さんがイライラすると赤ちゃんもイライラして泣いちゃいますよ』などと言われていたのだろうか?

私自身が覚えている最初は4才の頃だ。

『ママ?おねんねする?』

母がハッとしたように両手で口をふさいだ。

私には『あ〜ご飯作るのめんどくさい。アリサがいなかったら寝ちゃいたいわ。』と聞こえたが、母はそれを心で思っただけだったのだ。

その頃の私は、口から出る言葉と心の言葉の聞き分けをしていなかったし、自分以外の人は、口から出る言葉しかわからないのだとは知らなかった。

今思うと母は私がしゃべり始めた頃から、私の能力に気づき、私の前では決して余計なことを考えないように努めていたのだろうが、その時はよっぽど疲れていたのか、つい考えてしまったのだろう。

『アリサ…今のママの寝ちゃいたいって声は、今おしゃべりしてるママの声と同じように聞こえた?』

『ちょっと違う』

『どう違うの?』

『…わかんない…』

『アリサ…そのちょっと違うお声は聞いちゃダメよ』

『どうして?』

『どうしても。その声は聞いちゃいけない声だから。怖い怖いだから。』

4才の子供に呪文がかかった。

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夜蝶〜アリサ〜 ©著者:茉莉花

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