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5章:好きな人
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息がうまくできないまま、僕は亜椰に電話をした。
何度か呼び出した後、亜椰の気だるそうな声がした。
「…なに?」
「さっ…の…、メ…」
唇も口の中も、喉も乾いて、上手く声にできない。
「なに?ちゃんと喋ってくんないと、なに言ってるかわかんない」
「……さっ…き、の、メ…、メー、ル」
なんとか言葉にすると、亜椰の大きな溜め息が、聞こえた。
「あのままだけど?好きな人ができたから、もう会えない」
「す…好き、な、人…って…」
「皐月の知らない人、てゆうか…あんたには関係ないから」
亜椰の言葉に、涙と言葉が一気に溢れ出てきた。
「関係なくないよッ!!僕は亜椰の彼氏でしょ!?僕には亜椰を知る権利があるんだ!!亜椰は…」
「ねぇ、声が大きすぎてなに言ってるか聞き取れない、音割れちゃってるから」
亜椰が、冷たく笑う。
「お願い、お願いだから捨てないで…なんでもするから…」
「無理…切るね」
「やだッ!!切らないで!!僕の話聞いてよッ!!」
泣きながら訴えた僕の言葉も虚しく、電話は切れた。
それから何度も掛け直したけど、亜椰は電話に出てくれなくて…僕の目の前は、真っ暗になった。
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